1) 2001年11月3日
Yさんは、5年ほど前から、うちの病院を使ってもらうようになっていた。
すごく忙しい人で、交通安全活動に東奔西走しておられた。
よく、風邪をひく方で喘息をもち、若い頃、結核になったことがあるようで
胸のレントゲン写真にはいつも陰が写っていた。
うちの病院は消化器がメインで、ほんとうに癌が多く見つかる。
Yさんにも「検査はちゃんとしなきゃだめだよ。」と話はしていたが、
なかなか検査できずにいた。
ある日、C病院から、「Yさんが消化器癌の肺転移の可能性があり、こちらに
入院させました。」と連絡が入った。
なかなか体調が良くならないため、息子さんが大きい病院に連れて行ったら
すぐに入院するように言われたそうだ。
私は後悔した。 無理しても胃の検査くらいはお願いしてやっておけば
よかったと…。
私がいくら「検査をしなさい」と患者さん本人に言ったとしても、息子さんは
そのことを知らない。
私は検査も出来ない医者にうつっただろうか。
一ヶ月程して、Yさんの死亡広告を見つけた。 手遅れだったのだろうか。
鬱々とした気分になった。 C病院からの返事には、「肺炎が悪化して
亡くなった。」旨が書かれていた。
どうも、癌ではなかったようだ。 Yさんは亡くなったけれど、僕はちょっと
ほっとした。
そして思った。 もっと患者さんには検査を受けていただきたいと。
患者さんが拒否しても患者さんの家族の人はそのことを知らない。
まわりの人も知らない。
近くの開業医にかかっていて、検査もしっかりしているという話をする
患者さんからいかに多くの癌がみつかることか…。
それが手遅れであることもよくあることだ。
それが反対に私の身にふりかかろうとは、思ってもいなかった。
前にもまして、私は整形や、高血圧で受診している患者さんたちに、「検査も
してくださいね。」と勧めるようになった。
うるさいと感じる患者さんもいるだろう。 もううちには来ない患者さんも
いるかも知れない。
でも、やはり最低限の消化器系の検査は受けて欲しい。
、私の患者さんを守っている誇りと、患者さんの健康のために。
2) 2002年3月10日
そう、私は常々、バリウムによる胃透視が、曖昧であると説明していますが、
ある患者さんに、胃透視をやってもらいたいと言われたんですね。
ファイバースコープ検査の方がいいですよと、説明したのですが、
その患者さんはファイバースコープの検査が高いからと教えてくれたんです。
でも実際には、検査の点数はファイバースコープ検査が1140点、
胃透視検査が1175点と、胃透視検査の方がわずかばかり高いのですね。
ただ、その患者さんは胃検診のことを言っていたのです。
検診はどんな僻地でも確実に実施されなければならないという性格上、
胃ファイバースコープ検査は許可されていないのです。
本当なら、胃癌検診は胃透視か胃ファイバースコープ検査のどちらでも
患者さんが選んでいいというようになれば、一番いいんでしょうけどね。
弘前市の場合、胃癌検診で患者さんが払うお金は1000円ですみますが、あとで
差額分10750円は弘前市から病院に振り込まれるわけです。
胃ファイバースコープ検査では3割の人で4000円払わなければいけませんから
この差は大きいです。
私はすぐに自分の病院でも胃癌検診が出来るように申請しました。
お金のせいで検査をしないというよりは、まだ胃透視でも検査してもらった方が
患者さんのためになりますものね。
胃透視と胃ファイバースコープ検査の料金がほとんど同じということはお医者さん
でも判っていない方が多いようです。
胃透視には写真を見る眼は要求されますが、あまり技術は必要とされません。
また、胃透視で疑問に思えるところがあれば、それから胃ファイバースコープ検査を
行いますので、胃透視は開業医にとっては2倍の検査が出来る「おいしい」検査に
なるのです。
これと同様のことが大腸検査にも言えます。
S状結腸より奥に大腸ファイバースコープを入れる技術のない先生はそこから奥に
バリウムを注入し、大腸バリウム検査を併用します。
別のところでもお話していますが、大腸バリウム検査(注腸検査と言われています)
では病変を見落とす確率が非常に高いのです。 万が一、「少しおかしいな」とその
先生が思っても、「もう一回、他のお医者さんのところで検査しましょう」とは
言いにくいようですしね。
しっかり盲腸まで大腸ファイバースコープ検査をした場合の検査料は1550点、
対して、診断力の劣り、X線被爆するS状結腸ファイバースコープ+注腸検査は
約2000点と、技術を必要としない検査の方が高いお金を取れるようになっています。
みなさんはおかしいと思いませんか?