痔核について

1) 痔核ってなんですか?

 人間を含み動物には肛門の内側に痔静脈という血管をもっているんです。
これは大切なもので、他の動物では免疫の要でもありそのために血流が
多くならなければならなかったようです。 残念ながら人間では肛門が免疫
の要ではなくなっています。 
 また、痔静脈は直腸の内容物が洩れないようにするパッキングの役目も
担っています。 直腸内に固体や液体が入り込んでいても気体(おなら)だけ
うまくだすことが出来るでしょう? かなり高度なパッキング技術がないと
あのようにガスだけ出すことは出来ませんよね。

 この痔静脈はゴム風船のようなもので、腫れたり、縮んだりするわけですが、
あまり腫れすぎると元に戻らなくなってきます。

 みなさんがおっしゃるいぼ痔、痔核は一般にこの内痔核、痔静脈の腫れたもの
のことを言います。

2) どうして内痔核になるの?

 

 人間が直立歩行をするようになって約400万年程です。四足歩行を
している時は心臓と肝臓と肛門が一直線に地面と平行になっていました。

 二本足歩行をするようになって心臓と肝臓と肛門は地面に垂直となり、
その分の静脈圧(静脈の血圧)がなにもしなくても、肛門の痔静脈にかかる
ようになりました。
 手や足は静脈の血液が逆流しないように逆流防止弁がついている
のですが、心臓と肝臓、肛門の間には逆流防止弁がないんですね。

 便秘で力んだり、トイレで長い間、ふんばったりすると、肛門が広がった
時に腹圧がかかった痔静脈が力んだ分だけ腫れあがることになります。

 痔静脈は風船のようなもので、ある程度までは腫れても圧が減れば元に
戻りますが、何度も必要以上に腫れると、元に戻らなくなってしまいます。
これが内痔核になります。

 また、痔静脈と括約筋をくっつけている支持組織があり、これが弱って
きても痔静脈は肛門の外に出やすくなります。

3) 痔の治療はやはり手術しかないの?

 痔の治療は保存的治療が原則になります。 が、脱出することで、
患者さまの社会生活が著しく損なわれる場合や、出血が多く、貧血
が進行してしまう場合などは、やはり手術になります。

 当院でも、極端に脱出した痔核でも、患者さまが手術しなくてもよい
と思われる場合に、無理に手術を勧めるようなことはありません。

 だいたい、約2割の人が手術になるようで、専門医のいる病院では
それから極端に多くなったり、少なくなったりすることはないようです。

 手術にはその施設、施設で好みがあるようですが、一般的には
現在は半閉鎖法を行います。

 当院にもレーザーメスがありますが、レーザーメスを使えば痛み
がないなどということはありません。

 この秘伝の薬を使えばピタッと治るとか、注射一本で治るという
ような甘い言葉は信用しないほうがいいようですよ。